8K(スーパーハイビジョン)の歴史:8Kはどうやってできたのか

  • 2015年12月6日
  • 2018年10月15日
  • 8Kとは
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今日は8K(スーパーハイビジョン)の歴史について解説いたします。8Kって最近の話でしょ?って思われるかも知れませんが、実は研究開発のスタートは今から20年も前になります。

8Kとスーパーハイビジョンは同じ内容です。規格上の表現は8K、スーパーハイビジョンはNHKが提唱しているこの規格の愛称です。今でもHDのことをNHKではハイビジョンと呼んでいるのと一緒です。

開発当時の内容から今日に至るまでの主要な出来ことを当時のNHK技術研究所一般公開時に撮影した写真を交えて紹介していきます。

8Kの研究開発は20年前の1995年から始まった?

NHKのスーパーハイビジョンの歴史サイト(//www.nhk.or.jp/8k/history/index.html)によると1995年に超高精細映像システムの研究開始と記載されています。実は当時はまだ、8Kやスーパーハイビジョンという呼び方ではありませんでした。

また、研究開始と記載されていますが、この頃はまだ具体的な取り組みというよりは構想段階で具体的な内容は殆ど決まっていなかったようです。実際に研究開発が始まったのは2000年だったと当時のNHK技術研究所所長が谷岡健吉氏がとある講演で述べてました。

開発当時の名称は「走査線4000本級映像システム」

開発当初は「走査線4000本級映像システム」という名称でした。これは8Kの縦横の解像度(画素)が縦:7680画素、横:4320画素あり、横の方向の画素=走査線であるためです。当時はテレビがブラウン管がメインであったことも関係します。

そもそも「走査線」という表現はブラウン管ではよく使われていましたが、液晶テレビでは使用しません。これは映像を表現する方法が異なるため液晶テレビには走査線という概念がないからです。名称からもかなり昔から研究開発がスタートしていたことが伺えます。

当時のロードマップには2020年頃に試験放送開始、NHKが放送開始(ラジオ放送)してから100年となる2025年に実用化となっていました。もし、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まってなければ恐らくこの予定で進んでいたでしょう。

2004年、「スーパーハイビジョン」と命名

今から11年前の2004年にようやく仰々しい名称から私たちが最近よく耳にする「スーパーハイビジョン」という名称に変更となりました。当時見に行った時に撮影した写真がいくつかあったので簡単に紹介します。

初期型スーパーハイビジョンカメラ

8K-history-2004-camera1 8K-history-2004-camera2

当時はスーパーハイビジョンに対応するカメラは上記の2台しか存在していませんでした。上が1号機、下が2号機です。1号機はなんとカメラ本体だけで80kgもあり、撮影にもっていくだけでも一苦労な存在でした。

下の2号機を見て頂くとカメラの後部からケーブルが何本か出ているのがわかります。これは当時、このスーパーハイビジョンの映像を出力可能な規格・ケーブルが存在していなかったため、地デジやBSデジタルで使っているHD用の規格(HD-SDI)・ケーブルを使って、映像を16分割し、16本のケーブルにて出力を行っていました。当然ながら、保存も16分割して保存を行っていました。

当時の仕組み

8K-history-2004-about-camera 8K-history-2004-display

上の写真が1号機のカメラシステムの概要が記載されています。カメラ本体だけで80kgもあったのですが、カメラ自体に映像出力機能はなく、映像を出力するには別途「カメラコントロールユニット」と呼ばれる装置が必要でした。

 

詳細については覚えていないのですが、撮影機材の総重量は数トンだったと説明員の方が話していました。今では考えられない重量です。

下の写真は公開当時に使われたディスプレイ(プロジェクタ)システムの概要です。こちらも当時はかなりの力技でした。こちらもスーパーハイビジョンに対応する機器は当然なく、しかも2台では実現しないため、2台の映像を掛け合わせるという手法でした。

 

また、リアルタイムにエンコード・デコードする技術がまだなかったため、すべて非圧縮にて保存・再生が実施されていました。そのデータ量は約18分で3.5TBという膨大な量でした。つまり、まだ放送というレベルではなく、今でいうVODの世界でした。

 

今振り返って見ると、2004年の時点では今の8K(スーパーハイビジョン)と比較するとそもそもの映像・フレーム数などすべての内容でまだ開発が追い付いてなく見劣りする内容でした。

 

映像は8Kの解像度をフルに表現することが出来なかったため、「画素ずらし」という手法で補完する方法を用いていたので厳密には8K相当の解像度はありませんでした。

 

フレーム数は今の地デジやBSデジタルと同様の60i(インターレース)でした。一方で今のスーパーハイビジョンは最大120p(プログレッシブ)という規格となっています。この2つをデータ量で比較すると4倍差があります。当時はこれが限界だったようです。

2006年、リアルタイムエンコード技術が確立、放送へ一歩前進

圧縮しない状態での生放送実験には前年の2005年に実現しました。しかし、圧縮しない状態というのはものすごい帯域(約100Gbps)を必要とするため商用放送には全く向きません。そのため、リアルタイムで圧縮する技術の開発が進められていました。

2006年にリアルタイムでの圧縮が実現し、この年の一般公開にて紹介されていました。この年の公開はNHK技術研究所の前に8Kカメラが設置されており、研究所内でその映像をリアルタイムで見れるという内容が展示されていました。

とはいえ、当時の装置は当然のごとくものすごく巨大でした。。。

スーパーハイビジョンのリアルタイムエンコード・デコード装置

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上の写真が8K(スーパーハイビジョン)の映像をリアルタイムに圧縮するエンコーダー装置です。そして下の写真が複合化するデコーダー装置です。上の放送局側はこのサイズを許せても、下のデコーダーはありえないサイズでした。

なぜならデコーダーは視聴する各家庭に必要な装置だからです。しかもファンの音が相当していたので、もしもこの装置が家にあっても視聴どころではなく全くほかの音が聞こえない状態になりそうです。

ようやくリアルタイムエンコードが実現したのですが、当時はMPEG-2(H.262)という圧縮技術を使っていたため250Mbpsという帯域が必要でした。MPEG-2という圧縮方式は地デジ・BSデジタルにて利用されている方式です。

 

2007年、リアルタイム圧縮技術が進化。データ量をさらに少なくすることが実現

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2006年にリアルタイム圧縮技術の確立により、スーパーハイビジョンが現実的に生放送が可能となりました。それからの数年は圧縮技術に関する研究開発が中心となりました。

2007年の一般公開では前年のMPEG-2方式の圧縮ではなくH.264方式という新しい圧縮技術を用いた内容でした。

H.264はMPEG-2と比較すると最大でデータ量を約半分に抑えることが可能です。その分計算処理が増えるため、リアルタイムでエンコード・デコードするには高性能なCPU等が必要です。

この公開から6年後の2013年に来年から開始される8K試験放送と同様のH.265(HEVC)方式によるリアルタイムエンコーダ・デコーダ装置が公開されました。

単板式の8Kセンサーが初公開

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スーパーハイビジョンカメラはこれまで一つのセンサーだけではスーパーハイビジョンの解像度に対応出来なかったため、4板方式というという方法を採用していました。

 

これは光を光をRGB+画素ずらしに対応するために4つへ分光(R,G1,G2,B)をしていました。そのため分光する部分(プリズム)と各色を読み取るためのセンサーがそれぞれ必要でした。

 

このことがカメラが大型化してしまう大きな要因だったため、カメラの小型化には単板方式のセンサー開発が必要でした。2007年、まだモノクロでしたが初の単板方式のセンサーの公開がされました。

この3年後の2010年にはルカラー単板方式のセンサーが一般公開されました。現在の8K対応カメラ(PMW-F65RS)等は基本的にすべて単板方式です。

 

2011年、8Kディスプレイが実現

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2011年にはNHKとシャープが共同開発した85インチの8K対応液晶ディスプレイが公開となりました。今年発売になった8Kモニター「LV-85001」の原型です。

 

2012年、スーパーハイビジョンが国際標準規格化

NHKの研究開発から始まったスーパーハイビジョンは遂に国際標準規格として認められてITUからBT.2020として勧告されました。2020と聞くと如何しても東京オリンピック・パラリンピックを連想してしまいますが、この「2020」という数値は2020年とは全く関係なく、2020番目に出た勧告という意味です。

まとめ

8K(スーパーハイビジョン)は構想スタートから20年、試験放送の開始も決定しました。一般家庭に普及するにはまだまだ課題が多いですが、テレビって一度見てしまうと何だかんだ言っても慣れてしまいます。

カラー化、デジタル化、ハイビジョン化、4K化とより綺麗に鮮やかにと進化してきているので8Kもオリンピックに間に合うかは別としていずれは普及していくでしょう。

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