「4Kテレビ」ですら、まだまだこれからですが、最近少し話題になっている「8Kテレビ」について簡単に解説します。
8Kとは?
8Kとは、4Kのさらに4倍キレイな次世代の映像規格です。4Kの4倍というとフルHDの16倍もキレイということになります。

私が初めて8Kを見たのは、今から11年前の2004年のことでした。2004年といえば地上デジタルが始まった翌年です。ようやく地上波がアナログからデジタルへ切り替わる時にもうこんな開発・試験が始まっていました。
場所は世田谷にあるNHK技術研究所内の一室。映像はディスプレイではなく、プロジェクタによる投影で、コンテンツは屋久島での撮影でした。8KはフルHDの16倍キレイと上記に書きましたが、この時の上映は、まさしくフルHDの16倍というのにふさわしい方法で、上映されました。
実は当時、この8Kに相当する映像を1台で保存・再生出来るシステムはなく、8Kを16分割してフルHDにして保存していました。再生する時はこの16分割した映像をつなぎ合わせて再生し、8K相当の映像を作っていました。
すでに私は、4Kに関わっていましたが、画質としては明らかに4Kより上でした。あまりの画質に、驚きと興奮したのを今でもよく覚えています。4Kですら実用化はまだまだ難しいと実感していた状況でしたので、8Kなんていつ実用化出来るんだ?という疑心状態でした。
当時はまだ8Kとは呼ばれてもなく、「走査線4000本級映像システム」という名称でした。走査線というのはテレビの横の解像度です。※走査線=横解像度のことです。
この「走査線4000本級映像システム」はNHKがハイビジョン(NHKではHDのことをハイビジョンという愛称で呼んでいます)の次世代版として研究を行っており、のちにスーパーハイビジョン(海外ではSHV)という名称で実用化に向けて準備を進めています。
圧倒的な高画質、解像度はなんとフルHDの16倍!!
8K(スーパーハイビジョン)の解像度は7680 × 4320。数字だけではあまり実感が沸きませんが、画素数にすると約3300万画素。最新の一眼デジタルカメラの画素数に匹敵します。
高画質であれば当然、そのデータ量は膨大です。この8Kを圧縮せずに保存をしようとするとなんと約12GB/sのデータ量になります。これはDVDに保存した場合たったの0.3秒で一杯になってしまうデータ量です。
当然、こんな膨大なデータ量を保存・編集・放送なんて出来ないため、最新の圧縮技術(HEVC/H.265)を使って画質を保ちつつなるべく少ないデータ量へ圧縮しています。
来年から始まる8Kの試験放送ではBSデジタルハイビジョン放送の約4倍相当である100Mbps前後に圧縮した状態で放送される予定です。
4倍と聞くと多いように聞こえますが、BSデジタルハイビジョン放送と比べると16倍の画素があるため、実質BSデジタルハイビジョン放送をさらに4分の1まで圧縮しながら画質を維持していることになります。圧縮技術の進歩はすごいですね。
8Kの凄さは画素数だけじゃない、究極の臨場感!!
8K(スーパーハイビジョン)の凄さはフルHDの16倍ある画素数だけじゃないんです。
映像の臨場感がフルHDや4Kとは全く違います。その理由はフルHDや4Kと比べて2倍あるもあるフレーム数。8Kは毎秒120フレームの表示が可能です。これは120pや120Hzと表記されることがあります。
また、色の鮮やかさや鮮やかさが全くことなります。専門的な用語というと色域がRec.2020対応し、鮮やかさについてはHDRという技術によりこれまでの映像より鮮やかで明暗がはっきりした映像表現が可能です。
とはいえ、まだ8Kテレビはまだありません。
最近、少しずつ8Kというキーワードが出てきていますが、まだ8Kテレビは存在しません。8Kテレビに最も近いのがシャープの「AQUOS 4K NEXT」シリーズです。
これはシャープ独自の「X8-Master Engine PRO」という映像エンジンが実現しています。
これは4K放送だけでなく、地上デジタルやBS/CSデジタル放送を含めて8K相当の画質に補間してくれる技術です。これであれば映像もキレイに見れますね。

技術的には、各画素ごとに上下や左右でそれぞれ分割して輝度(明るさ)ピークを制御することによって、疑似8K相当の画質を再現しています。この技術を一般のテレビで実現しているのはシャープだけなんです。

まだ最新の2モデルである80インチ「LC-80XU30」と75インチ「LC-70XG35」のみ対応となっていますが、今後はラインナップも増えていくでしょう。まずは価格がお手頃になってほしいですね。
実売価格は80インチモデルが約133万円~、70インチモデルが約71万円~まだまだお高いです。


8Kテレビはなくても8Kディスプレイは発売開始!
先ほど、8Kテレビはまだ存在しないと記載しましたが、8Kディスプレイはすでに発売されています。しかし、まだ業務用であるためメチャクチャ高いです。そのお値段なんと1,000万円以上!!
まずはお安い方から・・・といっても家が建ちそうなお値段ですが。
私もよくよくお世話になっている、アストロデザインという放送業務機材を専門としてる会社から55インチの液晶ディスプレイが発売されています。お値段は約1,000万円。
もう一つが先日のCEATEC JAPAN2015にて一般公開された、シャープ製の85インチの液晶ディスプレイ。こちらはさらにお高く、約1,600万円。
今の段階では、まだ大型のディスプレイばかりですが、もちろん小型サイズのディスプレイも開発されています。
こちらはJDI(ジャパンディスプレイ)が開発した17インチの8K液晶ディスプレイ。近い将来に、このディスプレイを搭載したノートPCが出てくるかもしれませんね。
ちなみにJDIとはソニー・東芝・日立3社のディスプレイ子会社を統合して作った会社です。主にスマートフォンやタブレット・PC向けなどの中小型ディスプレイを専門としている会社です。
8Kの実用化はいつ?試験放送は来年の2016年から~
8Kテレビはまだ存在せず・・・、8Kディスプレイは手が出ないほどお高い・・・・。
これだけ聞くと実用化はまだまだ先のようです。しかし、試験放送はなんと!来年の2016年から開始される予定となっています。

8K試験放送の概要
試験放送について概要は以下の通り。
- 開始時期は夏のオリンピックあたり
- 試験放送はBSデジタルを用いる
- 現時点で映像を受信出来るチューナーは発売されていない。
8Kの試験放送は来年にBS放送にて開始される予定です。まだ8Kの試験放送開始日は決まっていませんが、スケジュール表にはリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが開催されるタイミングが開始日のターゲットのようです。
実は前回の、2012年ロンドンオリンピックにて、8Kの試験放送(パブリックビューイング)は実施されていました。この時はBS放送ではなく、光ファイバーを利用したネットワークにて映像データを送って実現していました。
当時の特設サイトはこちら//www.nhk.or.jp/strl/shv/
技術的に詳しいことはこちらにまとめて紹介されています。
試験放送は、BSデジタル放送を用いて実施されます。しかし、今のBSデジタル放送と同じ方法では8Kの膨大なデータ量を送信することは出来ません。そのため、新しい変調方式(16PSK)の採用することにより現在の約2倍のデータ量(ビットレート)が送信可能となるようです。
2015年11月時点で、8Kの試験放送に対応するチューナーは発売はされていませんし、予定もなさそうです。
現時点では対応の8Kディスプレイが、1,000万円以上することから視聴はパブリックビューイング等の公共施設に限られそうです。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックは8Kで放送される?
まだ決定とはどこにも記載されていませんが、来年から試験放送が開始されることから、東京オリンピック・パラリンピックが8Kで放送されるのは間違いなさそうです。
問題は、これが一般化(一般家庭に普及)するのか?まだまだパブリックビューイングなどに限られるか?です。
そして、ズバリ気になるのは「4Kテレビはいつが買い時か?」です。来年から試験放送も始まるし、もう少し待った方がいいんじゃない?と考えている方も多いはず!
ここからは私の個人的な見解ですが、
2020年までに8K放送が一般化するかは、正直厳しいと考えています。
理由として、テレビの買換えサイクルからの推測です。
前回の一般的なテレビの買換えは、地上アナログ放送が終わった2011年前後です。テレビの寿命を7~8年と仮定すると次のサイクルは2018年頃となります。また、いまこのサイト読まれて4Kテレビを購入された方の次の買換えは2020年以降になるでしょう。
2018年前後に、普及価格帯のテレビが8K対応となっている可能性は正直低いです。ようやくエントリーモデルが4K対応となっているぐらいではないでしょうか。上記の資料では、2016年~2017年に2Kテレビ(フルHDテレビ)と4Kテレビの需要が逆転する見込みです。
需要が逆転するということは、価格も当然ながら下がってきます。今のHDテレビ同等はではないですが、1.5倍から2倍程度で買えるモデルも出てくるのではないかと予想しています。
youtubeでは8Kコンテンツをもう見ることが出来ます
8K試験放送は来年から、対応テレビはまだまだ先・・・などと書いてきましたが、8Kコンテンツがもうインターネット上に上がっています。youtubeはなんと!8Kにもすでに対応しているんです。youtubeの技術力は恐ろしい。。。
どうやって見るかは別として、8Kとしてアップされているコンテンツをいくつか紹介します。画面右下の画質設定ボタンをクリックすると4K画質の「2160p」の上に「4320p」という設定が出てきます。これが8K再生の設定です。
8Kコンテンツってどうやって作るの?と思われる方もいらっしゃると思いますので制作方法についてはまた紹介します。
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