
2016年1月9日、落語家が一堂に会する「大喜利」で有名な日本テレビ(日テレ)の超人気長寿番組「笑点」が8Kにて収録されました。日テレ曰く、恐らく世界初の地上波レギュラー番組の8K収録だったようです。
なぜ「笑点」で8K?
「笑点」は今年で50周年を迎える長寿番組。これまで日本テレビ(日テレ)として常に最新技術に挑戦してきた「笑点」にて50周年記念という観点から最新技術へトライということで今回の8K収録が実施されたようです。
しかし、現時点では、地上波では放送されない「笑点8Kスペシャル」として収録が実施されました。でもそれって・・・世界初云々ではない気が個人的にはしますが。。。
内容は?
「歌丸師匠・落語」「8K記念大喜利」の二本立て。
NTV Technical Resources Inc.によると、「笑点」は多くの番組が白黒放送であった1966年5月15日の第1回目からカラーで放送を実施。当時のカラーテレビ世帯普及率1%にも満たなかったようです。
テレビの世帯普及率視点で見ると、今でいえば、毎週放送する番組を1回目から4K放送するようなものなので、いかに「笑点」が番組スタートから新技術に取り組んできたかが伺えます。
また、「笑点」は日本テレビで初期にステレオ放送を採用し、デジタルVTRでの収録にも初期に挑戦していたとのこと。
50周年ということは、東京オリンピックの、その2年後に始まったことになります。笑点って長寿番組なだけでなく、時代の最先端をいく凄い番組だったんですね。
どんな機材だったのか?
8K収録用に調達されたカメラは全部で3台、収録機材も3台用意されました。
いずれの機材も次世代放送推進フォーラム(以下、NexTV-F)所有のもの。
日本テレビ(日テレ)が、NexTV-Fの8Kコンテンツ募集に採択されたため、無償で必要な機材が貸し出されました。

8Kカメラ3台の内訳
池上通信機製4板方式「SHV-8000」が2台とソニー製「F65」が1台。
両カメラとも触ったことがありますが、SHV-8000(写真右上)はバズーカ砲のようなカメラ。カメラボディ&レンズ(恐らくキヤノン「10X 18BN KASD」)が非常に重くて扱いが非常に難しいかつシビアな機材です。
一方、ソニー製CineAltaカメラ「F65(F65RS)」(写真左下)は、ハリウッドでも非常に評価の高いカメラ。さすがに肩に担ぐことは厳しいですが、通常のスタジオカメラと同様に扱えるカメラです。写真で見る限りは、フジノン社製の「HK5.3X75-M」を使用して収録しているようです。
恐らく、「SHV-8000」がアップ撮影用、「F65(F65RS)」が全体撮影用ではないでしょうか?機材の貸し出しが無償とは言え非常に贅沢な収録となったようです。
昨今のカメラは、オート機能が充実し、誰でも比較的簡単に撮影出来てしまうので、むしろ扱いづらい部分がカメラマン魂を揺さぶるポイントではないかと個人的には感じています。
8K映像の収録
8Kカメラで撮影された映像は、それぞれパナソニックの「AJ-Z0300」2台、ソニー「SR-R4 」1台にて収録されました。
「AJ-Z0300」とは
AJ-Z0300は、パナソニック社のP2カードシステム元にした8K用のカスタムP2レコーダ製品です。圧縮方式はAVC Intra4K/10bitとなっており、P2カード収録機17台にて構成されています。17台のうち、16台にて、8Kを16分割(Full HD)し、各P2カード収録機に記録(100Mbps/1台)します。残りの1台が2K(Full HD映像収録)と管理ファイル記録を行っています。
「SR-R4」とは
SR-R4は、ソニー製「F65(F65RS)」にドッキング可能な専用ポータブルレコーダーです。写真左下に映っているカメラの後ろに取り付けされてされている機材となります。
収録は過酷
池上通信機製の8Kカメラはボディ部分(カメラユニット)と映像化する部分(CCUユニット)に分離しています。そのため、ボディ本体の「SHV-8000」から、2芯の光カメラケーブル(Lemo)にて映像化する部分(CCUユニット)「SHV-8000」に入力します。
入力された映像を16分割(FullHD相当に分割)し、FullHDが伝送可能なBNCケーブル(16本)にて接続された、アストロデザイン社のカメラ画像処理装置「VP-8404」を介して、4Kモニタにダウンコンバートして表示しながら色味などを調整を実施。
「SHV-8000」の8K映像は、P2レコーダ「AJ-ZS0300」にて収録されました。P2カード一枚当たり100Mbps/1カードにて収録され、最大で1時間(P2カード一枚あたり64GB)の収録が可能となっております。
8Kでの収録は、カメラ1台あたり1時間の収録でなんと!1TBにも及ぶそうです。最近、我が家でもApple ProResでの4K/30p収録を行っていますが、2.5時間で1TB程度です。
わずか1時間程度で1TBにもなると、編集作業がかなり大変になる模様で、収録した「8K笑点スペシャル」の完成は3月初頭になるもようです。
収録はどんなだったのか?
想定はしていましたが、やはりフォーカスが”超”シビアで、8K専用ズームレンズがあまり寄り引きできないため、カメラワークにはかなり苦労しました。
また、パナソニックのレコーダーは、非常に大型で収録メディアはP2カードという名刺大のものが、カメラ一台につきなんと17枚!
ファイルサイズも1時間で1TBとこれまた大きく、ポスプロ作業には膨大な時間と手間がかかることになります。
音声は5.1chサラウンドにする為、マイク位置や本数・種類などの綿密なテスト収録を事前に行い、MAでのシミュレーションを経て本番に臨みました。
スポーツ番組では数多くの実績がありますが、今回のような”小屋もの”ではこれも初挑戦。MA作業にて臨場感のある音を目指しています。
と、大変だった様ですね。
しかし、この収録で得たものも多く、もの凄く高精細な映像を収録。
なんと歌丸師匠の目に映る照明の一つ一つまでわかるほど。と言いますから、女優さんたちも戦々恐々としているかもしれませんね。
以前の記事に4K対応メイクの方法について書きました。参考にどうぞ。
まとめ
「笑点8Kスペシャル」の編集は3月初頭に完成するようですが、放送そのものの予定は決まっておりません。
出典://www.nitro.co.jp/seisaku/report/2016/01/19/8k.html
すでにChannel 4Kの放送期間もごくわずか(2016年3月21日終了)と限らていますが、まずはChannel 4Kにて4K放送を行い、BSデジタルにて実施される8K放送にて放送してほしいと考えております。
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