8K実用放送(スーパーハイビジョン)普及へのカギは、ケーブルテレビ伝送?

 

10月19日、総務省は4K/8K実用放送の業務認定申請の結果を公表しました。
4K実用放送については、10事業者(社)から申請がありましたが、8K実用放送については
NHKが放送業務の認定申請を行っています。

しかし、8K実用放送(スーパーハイビジョン)はBS左旋での放送が予定されています。このBS左旋を受信するには、既存のBSアンテナでは受信することが出来ないため、新たに対応アンテナやケーブル等への交換が必要になるなど、放送開始前から多くの懸念が事項が上がっています。特に集合住宅などでは、既存のアンテナ設備等を交換するのが困難であるため、普及への最も大きな障壁になることが予想されます。

そこで、NHKを中心として8K放送(スーパーハイビジョン)を既存のケーブルテレビ網を使って伝送(再送信)するシステムの開発が進めらています。

8K対応のケーブルテレビ伝送システムを開発中

NHK、KDDI、ジュピターテレコムは、8K放送を既存のケーブルサービスを使って伝送するシステム開発を行っています。

また、上記の3社と合わせて日本デジタル配信株式会社(JDS)との4社にて4K/8K放送のケーブルテレビ網による再送信実験が予定されています。

NHK技研公開2016やケーブル技術ショー2016などでは、実際に2016年8月1日から開始している8K試験放送(スーパーハイビジョン)をJ:COMのケーブルサービスを使って伝送するテストを行っており、デモも実施されていました。

仕組みは?

現在、試験が実施されている8K映像(スーパーハイビジョン)伝送には、100Mbpsという非常に大きい帯域を使用しています。BS試験放送では、新しい伝送方式を採用するなど大幅伝送効率向上し、既存のBS17chのみで8K試験放送が実現可能なシステム開発が行われてます。

伝送路は複数チャンネルを束ねて伝送

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しかし、ケーブルテレビの1チャンネル(6MHz帯域)ではさすがに8K映像の100Mbpsを伝送することが出来ないため、複数チャンネルを束ねることで8K映像が必要とする100Mbpsを確保して伝送を行っています。

現在のケーブルテレビでは、64QAM(Qadrature Amplitude Modulation)で約30Mbps、256QAMでは約40Mbpsの帯域を確保することが出来るため、本システムでは、256QAMを2チャンネル、64QAMを1チャンネルの計3チャンネルを束ねることで8Kであるスーパーハイビジョンを伝送するのに十分な帯域を確保しています。

NHK技研公開2016では、複数搬送波伝送(チャンネルを束ねる)の状態のデモも実施されていました。

ケーブルテレビ局では8K映像を分割

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ケーブルテレビ(今回の実験ではJ:COM)局は、BS衛星経由で8K放送を受信し、専用の機器を用いて受信した映像を3分割にしてそれぞれを既存の各チャンネルを使って伝送を行います。分割された映像は、対応するSTBにて一つの映像に合成し、テレビに出力されます。

対応STBはソシオネクストが中心になって開発中!

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この伝送システムのキーとなる複数搬送波伝送⽅式による8K対応STBの開発を行っているのが、ソシオネクスト(socionext)社です。ソシオネクストは、NHK技研公開2016にて公開された世界初の8K放送対応チューナー(シャープ製)のLSIやSoCなどの開発を行っている会社です。

ケーブル技術ショーにて展示されていたSTBは、モックアップであるため実施には動いていなかったのですが、8Kケーブルテレビ伝送システムで最も重要な分割された各チャンネル映像を合成して出力するLSIをソシオネクスト社が開発を行っています。

2016年9月29日、上記の複数搬送波伝送を行う新しいLSI(SC1501A)についてソシオネクスト社よりプレスリリースがあり、CEATEC2016にて展示が実施されていました。

世界初、ISDB-S3・複数搬送波伝送⽅式の両⽅式に対応した復調 LSI を開発

プレスリリース:https://www.socionext.com/jp/pr/sn_pr20160929_01j.pdf

SC1501Aについて

sc1501a
出典:2016/9/29発表:ソシオネクスト社プレスリリース(PR2016045)世界初、ISDB-S3・複数搬送波伝送⽅式の両⽅式に対応した復調 LSI を開発より
isdb-s3
出典:2016/9/29発表:ソシオネクスト社プレスリリース(PR2016045)世界初、ISDB-S3・複数搬送波伝送⽅式の両⽅式に対応した復調 LSI を開発より
[横浜発、2016 年 9 ⽉ 29 ⽇] 株式会社ソシオネクスト (Socionext Inc.) は、世界で初めて、⾼度広帯域衛星デジタル放送⽅式 (ISDB-S3)・複数搬送波伝送⽅式 (ITU-T J.183) の両⽅式に対応したデジタル放送復調 LSI「SC1501A」を開発しました。本 LSI を使⽤することで、衛星直接受信、ケーブルテ レビでの再放送受信 (IF パススルー・トランスモジュレーション) の双⽅で、⾼度広帯域衛星デジタル放送による 4K・8K 放送の受信が可能になります。また当社は同 LSI を搭載した受信装置の試作も⾏い ました。同試作機は⽇本放送協会 (NHK)、KDDI 株式会社 (KDDI)、株式会社ジュピターテレコム (J:COM)、⽇本デジタル配信株式会社 (JDS) の 4 社が実施する⾼度広帯域衛星デジタル放送のケーブルテレビ網による再放送実験に使⽤される予定です。

発表されたこのLSIが素晴らしいところは、4K/8K実用放送(⾼度広帯域衛星デジタル放送⽅式)とケーブルテレビ伝送システム(複数搬送波伝送⽅式)の両方に対応出来ることです。しかも、1チップかつ7m㎡という小型であること。

STB自体はまだモックアップでしたが、来年あたりにはこのLSIを搭載したSTBが出てくると思われます。

デモ

ケーブル技術ショーでは、複数搬送波伝送⽅式による8K/スーパーハイビジョンの試験放送がデモが行われていました。

実際に、試験放送を衛星経由で受信し、8Kを3分割して伝送しているようです。

パナソニックもケーブル伝送システムを開発中

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今年のケーブル技術ショーでは、パナソニックも開発中の8Kモニターと合わせて、複数搬送波伝送⽅式による8K放送ケーブルテレビ伝送システムを展示・デモを行っていました。

こちらは目下開発中のためか、システム自体はかなり不安定で何度かフリーズしていました。

パイオニアも8K対応のSTBを参考出品

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ケーブルテレビ向けのSTBを開発しているメーカーは、複数搬送波伝送⽅式が国際標準化されたこともあり、2018年の4K/8K実用放送開始を念頭に各社とも製品化に向けて開発を行っているようです。

パイオニアについては、複数搬送波伝送⽅式を使ったデモではなく、映像&STBとも参考出展かつ別ソースからのデモ映像でした。

まとめ

2018年から開始予定の4K/8K実用放送まであと2年ほどですが、テレビ・チューナー等の視聴

機器から伝送システムまでまだまだ課題がたくさんあります。

BS右旋による4K実用放送や、ケーブルテレビ伝送システムなど既存の仕組みを使ったサービスであれば視聴環境を整えやすいため、視聴ユーザーは一気に増えると思われます。

ケーブルテレビ伝送システムは、今ケーブルテレビを視聴している家庭であれば、対応のSTBを導入することで4K/8K実用放送の視聴出来る環境を整えることが出来ます。

このシステムが実現したとしても、実際に視聴可能な番組は、4K/8K実用放送を行う事業者とケーブルテレビ事業者(主に日本デジタル配信株式会社(JDS))との間で再送信に関する合意が必要となります。

スペックありきではなく、見てもらえるための放送サービス開発を進めてほしいですね。

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