H.265の優れたエンコード(圧縮)技術が数値的(PSNR)だけでなく、主観的にも実証されました。普通に考えると逆な気がしますが、人間の目を用いた主観的観点にて実証されました。
H.265/HEVCはH.264/MPEG-4 AVCの後継規格です。現在、
PSNR(ピーク信号対雑音比)では実証済み
H.265/HEVCがH.264と比較して、「半分のデータ量で同等画質が実現可能」という点について、
H.265とは何かは以下を参照下さい。
実験内容
比較実験はIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc)の研究者によって行われました。IEEEとはアメリカに本部を措く、世界最大の電気工学・無線工学の学会です。一般的に一番有名なのはWi-Fi(無線)規格だと思います。よくWi-Fiの規格にIEEE802.xx.yなどとありますが、先頭の「IEEE」は同学会を意味しています。
実験内容パターン
実験は5種類の解像度及び3種類のフレームレート・色空間をを掛け合わせた20パターンで実施されました。実験に用いた組み合わせは以下の内容です。すべての試験映像は10秒となっています。
比較映像解像度
- DCI-4K(4096×2048)
- UHDTV1(3840×2160)
- 1080p(1920×1080)
- 720p(1280×720)
- 480p(832×480)
フレームレート
- 30fps(30フレーム/秒)
- 50fps(50フレーム/秒)
- 60fps(60フレーム/秒)
実験方法
実験方法は、最初、10秒間にオリジナル(Original)映像を視聴し、1秒後にエンコードされた圧縮映像(Coded)を視聴して映像の再現性を10段階で評価します。映像の再現性の試験結果が以下はこちらです。
3パターンの4K映像(DCI-4K,UHDTV1)結果です。
グラフは横軸は映像ビットレート(Mbps)、縦軸が主観による評価(MOS)及びPSNR(dB)を表しています。数値的(客観的)評価であるPSNRの結果は点線で表記されています。
同じMOS or PSNR値で比較すると、紫色(●)のH.265/HEVCは緑色(▲)のH.264に比べて左側にプロットされており、より低いビットレート(bps)で同等の画質を得られるのが分かります。
また、主観的な評価軸であるMOSの実線は赤色(●)のH.265は紫色の(●)であるPSNR値より左にプロットされているため、数値的よりもより低いビットレートでH.264と同等の画質が得られることがわかります。
IEEEの研究チームによると、H.265/HEVCのコーディングブロックサイズの幅が広く、予測アルゴリズムを使ったコーディングモードを数多く使えることが高い圧縮率を支えているとのこと。
今回の実験では、H.265/HEVCとH.264にて同等の画質を得るためのビットレート(bps)削減量は、客観的(数値的)評価であるPSNRでは約44%でしたが、主観的評価であるMOSでは約59%となっており、約6割のデータ量が削減が可能と結論づけされています。