
2/7、NHKの渋谷放送センターにて開催された「第45回番組技術展」に行ってきました。今回は、なんと!8K対応中継車(SHC-1)が展示・体験出来るコーナーがあり、実際に乗車することが出来ましたので中継車の中を紹介します。
NHKが放送技術を直接”見て・触れて・知って”を体感できるイベント第45回「番組技術展」を開催!8K対応中継車とは?

昨年の秋に池上通信機株式会社が、NHK向けに世界初の8K(スーパーハイビジョン)対応中継車を製作しました。納品された中継車は、「SHC-1」と「SHC-2」の2台。「第45回番組技術展」に展示されたいたのは、SHC-1でした。
ちなみにSHC-2は、翌日開催されるスーパーボウルの8K中継のため、アメリカ出張中でした。SHC-1とSHC-2は、仕様としては全く同じ中継車となります。
この中継車には、電源設備が搭載されていないため、単独では中継車として機能しません。必要な電源は、会場もしくは電源車(一番上の写真右端)に供給してもらう必要があるそうです。
改造すれば、電源設備を搭載することは可能ですが、法定で車体総重量が決まっており、電源設備を搭載するより、8K中継機材を搭載することが優先であるため、SHC-1及びSHC-2は電源が搭載されていません。
中継車内部は以外に広い
中継車の内部は、想像していた以上に広かったです。というのも、この中継車は、停車中であれば、内部空間が横に1m広がるように設計されているため、トラックの横幅より内部は広い空間が確保されています。
8Kモニターはアストロデザイン社の55インチ
8K対応中継車と言えども、8K対応モニターがたくさん搭載されている訳ではありません。中継車に搭載されている8K対応モニターはなんと1台。上記写真中央上に映っているモニターす。
このモニターは、確認したところ、アストロデザイン社の55インチ8Kモニターとのこと。8Kモニターの周りには4Kモニター多数並んでおり、中継車に接続された複数のカメラチェックは基本的に4Kモニターで実施するようです。
アストロデザイン社製8Kモニター「DM-3814」
アストロデザイン社が2015年9月より、発売を開始した放送業界向けでは最小クラスの8Kモニターです。価格は1,000万円となっております。発売時期こそ、昨年ですが、NHKでは製品化される前からアストロデザイン社と共同で8Kモニターの開発を行っていたようです。
製品化される前の8Kモニターも、NHK技術研究所の一般公開でも展示されていました。もにたーの詳しい情報は以下をご覧下さい。
//www.astrodesign.co.jp/japanese/news/news-20150918-2102.html
中継車の後ろ半分がモニタールーム



中継車の中は「モニタールーム」と「機材ルーム」の2つに分かれています。
ここまで紹介してきたのは、「モニタールーム」の様子。この8K対応中継車では、最大5台の8Kカメラを同時に接続することが可能になっています。
年末の紅白歌合戦時にもこの中継車が使用されたそうです。紅白歌合戦時は、この中継車をNHKホールに横付けし、各モニターでチェックしていたと内部を説明してくれた方に教えて頂きました。
中継車内部にはエアコンが2台設置してあり、見学した当日は暖房がついていましたが、普段は機材の熱がすごいため、暖房は不要とのこと。夏は、機材の熱により、中継車内部が相当熱くなるためエアコンが必須のようです。
モニタールーム内部の様子
暗くて見にくいですが、雰囲気だけでも伝わればと思います。
機材ルームは、通路分のスペースしかない




中継車の前半分は、機材ルームとなっているのですが、こちらはかなり狭いです。ほとんど歩く通路分のスペースしかありませんでした。両サイドには、8K対応レコーダー等の機材がぎっしり搭載されており、無駄なスペースがありません。
8K接続の基本設計は3G-SDI & HD-SDI×16
現在は、8K映像を1本の光ケーブル等で伝送することが可能ですが、この中継車が計画された頃はまだそのような規格・インターフェースがありませんでした。そのため、8Kカメラとこの中継車の接続規格は「3G-SDI]または「HD-SDIx16」にて構築されているとのこと。
特に「HD-SDIx16」で接続する場合、1カメラあたり16本のHD-SDIケーブルにて接続するため、スイッチャー側には膨大な端子が必要です。
次の8K中継車が製作される際は、1本で8Kカメラと8K中継車の接続が可能な光ケーブルが使われるでしょうが、しばらくはかなり大変な運用になると話していました。
8Kよりキレイに見えた4K有機ELモニター「BVM-X300」

8K対応中継車には、ソニー製の4K有機ELマスターモニター(マスモニ)「BVM-X300」も搭載されていました。正直、このモニターに映っていた映像が最もキレイでした。
解像度自体は4Kしかないため、8K映像の解像度表現は出来ていないのですが、自発光モニターであるため、コントラストよく、色域も素晴らしい映像でした。
以前、HDRセミナーにて、同モニターにて映像を見たことがありますが、その時より映っていた映像はキレイでした。4Kと言っても、8K映像をダウンコンバートした映像を有機ELモニターに出しているので、キレイなのは当たり前と言えばそうなのですが。。。
このモニターほしいですが、価格は30インチで380万円もします。8Kモニターほど高くはありませんが、車が1台買えてしまう金額。到底買えそうにないですね。
まとめ
これまでにHDの中継車の内部を見学したことは何度かありますが、4K対応中継車を飛び越えて、8K中継車の内部を見学出来る機会に恵まれたは非常にラッキーでした。
内部は、非常に効率的に機材が搭載されており、今後の8K中継・8Kコンテンツ製作には欠かせない存在なることは間違いなさそうです。
この中継車には、トラポン(衛星へ信号を送出する)設備がないため、今後は8K対応衛星中継車が登場してくるでしょう。8月から開始される8K試験放送が待ち遠しです。