2016年2月5日(金)、スイスのジュネーブにて、HDR(High Dynamic Range)の国際標準規格に向けた会合(SG6)が開催されました。
今回の会合(SG6)でも、決定はしませんでしが、もう間もなくITU-R勧告(国際標準化)となる見込みです。
ITU-R HDR-TV 勧告案について
勧告案:HDRテレビの番組制作及び国際番組交換用の映像パラメータ
勧告案内容の概要は、2方式・3案の併記となっております。内容としては、前回の会合ベースですが、今後の主な検討課題が具体的にあげられており、これらが勧告への最後の課題となるようです。
- 定輝度信号の妥当性
- PQ方式のOOTFの妥当性
- HLGサポート外の輝度(1,000nit)以上の対応について
上記の課題はありますが、これらは今後のHDRに対する課題という意味合いもあるので、一旦は原案で勧告されて、part2にてサポートされるという可能性もありますね。
方式:Hybrid Log-Gamma(HLG)とPerceptual Quantizer(PQ)の2方式
HDRの方式については、従来通りのHybrid Log-Gamma(HLG)とPerceptual Quantizer(PQ)の2方式となっています。
Hybrid Log-Gamma(HLG)は、NHKとBBCが提案している方式であり、最大約1,000nitまでサポートし、撮影するカメラ側でサポートするため、HDR対応テレビ・非対応テレビの双方に向けて1ソースでの出力が可能であるため、生放送向きとなっています。
一方、Perceptual Quantizer(PQ)方式は、指数関数を用いており、HLG方式の約10倍である最大10,000nit前後までサポートしているため、HLGより広いダイナミックレンジをサポートしています。しかし、こちらは、テレビ側でサポートするため、対応・非対応テレビの双方に向けたソース配信が必要であるため、VOD配信向きとなっています。
NetflixやぷららのひかりTVでの4K/HDR配信は、こちらのPQ方式を採用しています。
OETF(光‐電気)、EOTF(電気‐光)、OOTF(光‐光
FullHD(フルハイビジョン)もHDR規格対象に
HDRと聞くと、4Kや8K放送が前提と考えてしまいますが、SG6の勧告案では。FullHD(フルハイビジョン)でのHDRサポートについても、規格として盛り込まれています。
3月上旬、ドラフト案が提示
先月開催されたSG6会合での案ベースにて、3月上旬にドラフト案が提示されました。
関係者にドラフト案の感触について確認したのですが、ほぼSG6会合の内容ベースで確定しそうとのこと。予定より、かなり長引いた標準化がようやくまとまりそうです。
ドラフト案を一言で言うと、Dolby Labのロビー活動強しと言った感じです。
4K8K試験放送のHDRは、ITU-R勧告ベース
8月1日からNHKがスタートする8K試験放送、12月1日からは、NexTV-Fが4K試験放送が開始されます。
現在、CS衛星放送で実施されている「Channel 4K」では、HDR規格がサポートされていませんが、BS衛星デジタル放送を用いた4K8K試験放送では、HDR規格がサポートされます。
昨年の12月に試験放送の概要については、発表されましたが、HDR規格については、国際標準規格(ITU-R勧告)に準拠するとなっているため、技術的な詳細は未定のままです。
まとめ
ドラフト案ベースで行けば、4月にはHDRが国際標準規格(HDR-TV)となるでしょう。4K8K試験放送開始が8月に迫っていることを考えると、もろもろギリギリというか製品化はほぼ間に合っていないのが現状です。
リオオリンピックでは、NHKが8K試験放送を予定していますが、個人向けの8K製品はまだ発売されていないため、全国の各NHK支局に8Kディスプレイが設置されて、簡易パブリックビューイングになる予定です。
リオオリンピックでは、全部で130時間前後の8K放送が予定されており、基本的にはHDR対応での試験放送が予定されているので、今からオリンピック中継が楽しみです。