本サイトへ「地上波 4K放送」や「4K 地デジ」というキーワード検索にて、多くの方に見にきて頂いております。その理由としては、やはり「放送」というキーワードが「地上波」を連想させるからだと考えています。
実は、NHKでは地デジでの4K放送ではなく、次世代地デジ放送にて8K(スーパーハイビジョン)を実現しようと研究が進めらています、かなり先の話となりますが・・・
現在、4K放送の「放送」は衛星放送やIP放送のことを意味しているのですが、今後の予定や今発売されている4Kテレビでは、2018年に開始予定の4K・8K実用放送を視聴するには、別途チューナーが必要なるなど、今後の予定について購入時にしっかりと説明してくれる量販店等は少ないのが実際のところです。
次世代地デジ8K放送デモ
NHKでは、総務省の委託研究「超高精細度衛星・地上放送の周波数有効利用技術の研究開発」を平成26年度から3年間(予定)の研究期間にて受託しています。
地デジの8K放送実現は、研究名称でいうと後半の「地上放送の周波数有効利用技術の研究開発」にて進められています。
「地上放送の周波数有効利用技術の研究開発」とは
4Kでのデジタル地上波放送(地デジ)は当分実現しない!と以前に紹介させて頂きました。4Kでの地デジが当分ないなら8Kでの地デジはもっとのその先・・・と言いたいところですが、NHK的には地上波での8K放送実現を目指しているようです。
衛星での4K/8K試験放送がほぼ同時に進行しているところを見ると、次世代地上波に関する試験も同様に4K/8Kが同時進行する可能性が考えられますが、この資料にもまだ実現時期が載っていないため、実際にはかなり先を見越した研究のようです。
すべての映像を8K(スーパーハイビジョン)に!
地デジでの8K放送実現に向けて取り組んでいる方と半時間ほどディスカッションしたのですが、そこから伝わってくるNHKとしての思いは「すべての映像(放送)をスーパーハイビジョン(8K)にしたい」という内容でした。
放送に利用する帯域幅は今の地デジと同じ仕様で約6MHzなのですが、主に次世代圧縮技術と偏重方式の効率化を用いて8K放送の実現を目指しているようです。
デジタル地上波での8K放送は課題が山積
現在の地デジ放送では、フルハイビジョンより少し画角の狭い1440×1080という規格にて放送が行われています。
これは、地デジ放送の帯域では、今の地デジ放送にて使用されている圧縮技術(MPEG-2)でのフルハイビジョンを放送するに十分な情報量の伝送容量がないためです。
次世代地上波放送は35セグメント
今の地デジは、約6MHzという帯域を13のセグメントに分割して放送に使用しています。
13あるセグメントのうち1セグメントはワンセグ放送に使用しています。次世代放送には、既存よりさらに細分化を行い35セグメントに分割して放送することを想定しているようです。
伝送効率化は「4096QAM」と「MIMO」がキーワード
既存の地デジと同じ帯域にて多くの情報量を伝送するためにキャリア変調方式が最大で4096QAMに、システム(デジタル地上波の送信方法)にMIMOが検討されています。
変調方式については、普段あまり耳にする機会はないと思いますが、MIMOについては聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
MIMO(Multi Input Multi Output)とは、複数のアンテナを組み合わせて(同時)データ送受信の帯域を広げる無線通信技術です。
複数のアンテナを同時に送受信することにより、単一のアンテナと比較してより高速な通信を行うことが出来ます。同技術やWi-Fiやモバイル通信に活用されています。
デモに使用された変調機器は大型装置
地デジでの8K放送実現には、変調方式として4096QAMがほぼ必須であると、研究されている方は話していました。現在はまだ実験段階であるため、装置の小型はこれかららしく、デモコーナーには大型な変調器と復調器も展示されていました。
デモ映像は、上記の機器を経由して実際の地デジ放送波を想定したデモ内容となっていました。映像レートとしては、約50Mbps~80Mbps前後に圧縮しているそうです。4Kにて撮影しているので、
映像圧縮は次世代の圧縮技術を想定
圧縮技術にはHEVCよりもさらに効率がよい次世代圧縮技術の利用が想定されています。この次世代圧縮技術を用いることで、HEVCよりも最大で2倍程度の圧縮効果が期待されており、2020年~2020年代前半での標準化を目指して研究が行われています。
以前、次世代の圧縮技術の最新状況を紹介させて頂きました。その際は、標準化が2020年代の前半と記載していました。
この分野を研究されている方とも今年の技研公開2016にて話す機会があったのですが、最近になって標準化目標がかなり早まったと説明されていました。
こちらについては別記事にて紹介する予定です。
まとめ
一番気になる実現目標時期については、まだ具体化されていませんでしたが、これまで見て来た数々の技研公開発表から想定すると、10年以内に一部のエリア限定にて試験放送を開始するような感じでした。
開発を担当されている方も、研究者としては2020年の東京オリンピックにて実証実験を実現ししたいと個人的な見解を話していました。
4096QAM、MIMO、次世代圧縮技術等どれをとっても既存の放送とは互換性がないため、現行の放送波を用いて実験を実施することは可能でしょうが、視聴には当然ながら対応チューナーが必須となります。
今回の総務省が発表した「4K・8K実用放送」の視聴について対応チューナー必要であることの発表に対する騒動を考えると、かなり長い年月をかけて対応していくロードマップが必要でしょう。